エリアマーケティング
地域差に認められる諸々の市場機会を戦略的にとらえ、各エリアに利益化への効果的なマーケティングの統合化を行うこと。
多市場化へのマーケティング戦略
社会および市場の環境条件の変化にともない、マーケティングの戦略的視点も自ずと変ってくる。
低経済成長と多様な市場ニーズのもとでは、必ずしも従来の考え方と方法によっては十分な市場効果は期待できない。そこで求められるマーケティングは、市場のニーズと対象市場層を的確につかんだ、より一層きめの細かい方法が必要になる。
また同時に、これからの市場ではさらに厳しい競争環境におかれることは必定であり、マーケットシェア戦略の強化が重視される。エリアマーケティングは、こうした時代の要請に応えるマーケティングであり、そこでは「地域」という環境条件がもつ市場特性を重視して、新しい効果的な市場開発のしくみをつくっていこうとする考え方であり、方法である。
人びとの多様なニーズの増大とともに、地域レベルでの様々な相違が問題の前面に出現しはじめた。いわゆるマーケティングにおける「地域差」の問題である。市場のニーズの差、すなわち地域間のニーズの差を認識することからの出発である。
エリアマーケティングはこうして、「地域差を考慮し、戦略応用するマーケティング活動」であり、「企業の経営。市場活動を地域という一定の環境と条件のうえで、風土性と歴史性によって培れた諸々の地域特性に合せて、市場の最適性を求めるマーケティングの統合活動」であるといえる。いわゆる、画一化・単一化対応から脱画一化・多市場化への戦略視点の転換である。
4つの地域差
エリアマーケティングは、昭和40年代中頃に提唱され、低速経済に入った五十年以降急速に企業の実践に取り入れられはじめた。マーケティングの考え方の多くがアメリカからもたらされたのに対し、エリアマーケティングは日本が発生の地であり、この言葉は一種の和製英語であるが、その経緯を探れば、マーケティングの定着とともに、必要が生んだ「マーケティングの日本化」ということができる。
いわば、日本における地域的事情がこのような考え方をとらせるということである。地方=地域ではないが、いま叫ばれる「地方の時代」ということとも通じるところではある。
「地域差」とは、この種の地域的事情を戦略的にとらえていこうとするものであり、つぎの4つの地域差がある。
(1)生活のあり方(生活レベル、生活パターン、ライフスタイル、ショッピングスタイル等)
(2)流通条件(商業構造、拠点力、流通チャネルカ等)
(3)競争条件(マーケット・シェア、競争相手、競争条件等)
(4)経営資源力(自社・競争者の市場参入の歴史、セールスパワー、イメージ等)
これらの地域特性を個々のエリアごとに的確にとらえ、エリア固有のマーケティングミックス戦略によって利益化をはかっていくのである。
戦略的市場獲得のしくみ
これからのマーケティングで重視されることは、製品づくつと市場づくりの一体化したしくみ開発である。エリア・マーケティングに期待されるのもこれであり、売れるものを、売れるエリアにロスなく合せていく「適地・適商の選択」を行っていくことである。
このことは必ずしも、エリアごとに新製品開発を行うということを意味するのではなく、既存の製品の選択的集中化によっても可能である。
同時に、市場の魅力度を測ったエリアの選択が重要であり、自社シェアと市場成長性の組み合わせによって、
(1)成長・競争エリア(シェア高い、成長性高い)
(2)利益エリア(シェア高い、成長性低い)
(3)問題エリア(シェア低い、成長性高い)
(4)新規または不利益エリア(シェア低い、成長性低い)
のいずれかに自社の全エリアを分類して、担うべきエリアの選択をしていくのである。なお必要に応じて、市場成長性の指標を他のマーケティング指標と代替することも可能である。
koushiru事務局
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