キャビテーションと洗浄効果
超音波洗浄に関係した人であれば、「キャビテーション」という言葉を聞いたり、読んだりしたことがある筈です。ところが超音波洗浄技術の関係書籍を見ると、それぞれの著者が勝手な意味合いでこの言葉を、洗浄効果の原因として使用しています。
キャビテーションと洗浄効果の関係がはっきりしていないのです。
何故このようなことが起きるのか。その原因は、超音波洗浄効果の主要因が「キャビテーション」ではなく「音響流」にあることにあります。
そこで今回は、これまでの非線形現象の動きの構造をもとに、キャビテーションと音響流の関係がどのように洗浄効果につながるのかということを説明します。
超音波洗浄機において、基本的な動きの構成要素は、キャビテーションです。
多くの説明にあるように、キャビテーションは振動現象です。洗浄対象物の表面で、汚れをキャビテーションで、粉砕・分解しても、表面から汚れが離れるようになる理由にはなりません。
しかし、現実には適切な条件設定を行うと表面から汚れが離れていく流れが発生します。
この流れが、音響流です。
音響流の流れは非常に複雑です。論理的理解だけでは応用できません。論理と経験で実験確認しながら、洗浄に適して音響流の設定を実現することが洗浄ノウハウになります。
そのためには、超音波発振制御プローブによる超音波発振と、音圧測定解析システムによる、音圧測定解析評価が重要です。
言葉では説明できない事項ですが、適切な音響流の設定による洗浄効果を経験をすると、より良い設定の追求により、対象物の変化や環境変化に応じた、洗浄方法の改善が可能になります。
具体的な対応として、音響流を認識して、超音波洗浄の観察・評価・検討をしながらオリジナル超音波洗浄モデルの開発を推奨します。
斉木 和幸
最新記事 by 斉木 和幸 (全て見る)
- 音と超音波の組み合わせを利用した超音波制御技術 - 2020年3月5日
- 複数の超音波発振制御技術 - 2020年3月5日
- キャビテーションと音響流の論理モデル - 2019年10月10日