SCMのニューノーマルとSDGs

はじめに

 これまで経営体のミッション(使命)は、個々が顧客満足実現に向けて打ち出してきました。さてミッションは、単に経営体やその同盟(アライアンス)としてのサプライチェーンが自分たちの姿勢だけを宣言していればよいのでしょうか? 顧客とだけ製品・サービスを通じたコミュニケーションが成立していればよいだけでしょうか?

既存のSCM

 これまでサプライチェーンは、国をまたいで情報、モノ、そしてキャッシュを交換してきました。スペインの服飾メーカーなどは、どの国の店舗に対しても企画から納品まで2週間以内にすませることができました。アジリティ(俊敏さ)に代表されるCOVID-19以前のSCMは、顧客満足にスピードもふくめ、(利益の)効率追求に勤しみました。

SDGs

 一方で、ESG(環境・社会・統治)投資にみられるように経営体の社会への関わり方はすでに資金に直接影響するようになっていました。COVID-19の騒がれる2020年以降は、さらに社会への配慮や責任は重視され、資金に影響していくことでしょう。社会や未来への積極的な接し方や心遣いが長期的な評価と投資へ変換されます。

 そうした中、グローバルな視点で2030年までの持続可能な(sustainable)開発(development)の目標(goals)としてもうけられた基準・指標がSDGsです。人類全体の今後を考えて練られたので、2020年以降の社会にも十分通用しむしろ重視されるべきSDGsは、多方面のニューノーマル(の模索)に参照されるべきモノサシでしょう。

MDGsからSDGsへ受け継がれたように2030年の達成期限を迎えるとともに名称替えをして同様の取り組みが推進されることは想像に難くありません。こうした長期的に持続される姿勢は、経営体が取り組むに値するSDGs領域の信頼性を担保しているのです。
 

ニューノーマルとSDGs

 SCMのニューノーマルもSDGsを強力に目標・下敷きにすると予想されます。サプライチェーン間の競争も単純に利益等の経済面を超え、社会への貢献や配慮につながる点での評価の比重が大きくなるでしょう。

 製品の広告は、抽象的で顧客を増やすためだけの宣伝文句だけではなく、自主的なモノサシに対する数値の増加・削減等の目標を掲げ、SDGsのどの部分に対応するか説明も必要でしょうし、仮に直接でなくともSDGsとのつながりを示唆するでしょう。SCMのニューノーマルにおける言語・記号・ツールは、SDGsがすでにポジショニングを完了しているとみてよいでしょう。
 

メタファーとしての生物

 ところでSCMはよく生物にたとえられます。SCMで交換される主な情報がモノの流れとストックだけだったために、生物を用いたメタファー(比ゆ)は感覚神経、脳、運動神経というおおまかな表現にとどまりました。

 SDGsには17の目標が挙げられ、それらは貧困、健康と福祉、教育、経済成長、そして気候変動など多岐にわたります。SCMのニューノーマルがSDGsをベースにすると、モノのストックとフローの情報のやりとりにとどまらず情報資源も多岐にわたり機能させることになります。あたかも五感を通すかのように社会を受容し、反射・反応として、そしてそれらを超えた未来として製品・サービス・社会貢献を提供し続けるでしょう。

情報資源とニューノーマル

 筆者は在庫期間情報や会計情報のSCMへの採用を提案しています。こうした情報資源の増加はムダを排し単純化を指向するマネジメントや科学の領域からみると逆行しています。

 しかし情報資源を増やし、SDGsを参照したニューノーマルへいち早く到達し、社会に責任ある貢献をすることで広い世界から投資を呼び込み、希望のある未来を出現させるとき、その姿こそが、世界の未来の希望となります。

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青柳 修平
キャッシュの最大化を、モノの多少にとらわれることなく考えると、単純に、販売を最大化させ、支払を最小化させればよい。このためには、失注・欠品しないほどモノを在庫し、返済金利の生じないように借入しなければよい。

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