JIT(ジット)はジャスト・イン・タイムの略で、ちょうど間に合うという意味になると思います。
トヨタ生産システムを最も代表する考えの1つで、生産する瞬間に調達が行われることを理想とし、モノを最少にすることによってキャッシュの最大化をねらうリーン生産方式の源となる考えです。
さて、これまでのコラムでは、所要量の「前倒し・山崩し・押均し」によって調達を安定化させることを提案しました。そこには、モノとキャッシュ双方の不足回避を並行するねらいがありました。
こまかく記すと、従来のSCMのもっとも重要な使命(ミッション)の1つであるモノを間に合わせること(1つめのJIT)に、キャッシュを間に合わせること(2つめのJIT)も加え、これらを達成させながらモノの流れをできるだけ安定させる(3つめのJIT)ようにするのです(JIT3)。
既存のSCMを振り返ると、モノを間に合わせると同時に最少にする努力も続けられてきました。一方、新方針のモノの流れは、1つに定まらなければならないものではありません(調達の最適化だけではない、SCMの新しい方針(戦略)とは?)。よって決算などのタイミングにモノが最少になるよう、調達を安定化させることは可能です。これまでより多く受注できるので、利益は今迄以上になります。
ところで、あたらしいSCMではキャッシュの値も扱うので、モノとキャッシュの双方の値でマネジメントすることができます。生産システムや状況によってはキャッシュで概算をしていくほうが堅実な場合もあるでしょう。
既報(制約条件の理論(TOC)からSCM進化のポイントを考える)で山元還元(山林への資金還元)にふれました。こうした環境面を考えると、山の手入れに必要なキャッシュが必要なタイミングに間に合うようにサプライチェーンのキャッシュの流れを想定し、それに向けてモノの流れを厚めにするなども、共創に寄り添うSCMの手腕のみせどころといえます。
こうしてみると、サプライチェーンの状況や共創の対象によって調達の安定のさせ方はまさに多様で、振幅を販売よりも小さくさせるだけでもブルウィップ効果を回避できた効用をみとめることができます。
ただし、より変動の少ないモノの移動量によるサプライチェーンが実現できれば、非自己へ配慮しているとみることができ、多くの移動経路で多様な共創へ貢献しているといえるのではないでしょうか?
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