【はじめに】
COVID-19の影響で社会は変革を余儀なくされています。モノづくりも、同期による在庫最少を資金増大につなげる方針だけでは手薄で、対応がすべて後手にまわり競争力は失われていくに違いありません。
以前は発注通りに調達できたので問題はありませんでしたが、コロナウイルスの伝播経路が予測できないことから、サプライチェーン上で把握していなかった突然のボトルネックが発生する可能性が高まりました。既存の同期だけでは、フォーキャストを使い製品、部品、そして原材料まで数か月をさかのぼってモノを最少にしているため、安全在庫でエラーや予測と実需のズレを補うことはできても、サプライチェーンの間断的な寸断をカバーできるとは考えにくいです。調達先の複数化で回避できればよいのですがリスク・不確実性にかわりはありません。こうしたことは、社会の慢性的なモノ不足とそこから生ずる悲劇を単純に予測でき、需要を満たさない供給が日本国の経済効率を著しく落とすに違いありません。
【モノづくりのCOVID-19対策】
極端をいえば決算時期以外は死に在庫がなければよく、原材料・部品の調達時期を柔軟に考えることは重要です。そこで、(決算のように)モノを最少にすべき先の時点から現在まで必要な原材料・部品をMRP的に予測し、計算単位期間あたりの平均量を算出して基準値を得て、さらに基準値を利益や在庫の状況に対応するようにした調整値を調達に採用することで、販売予測更新とともに安定したモノの流れをサプライチェーン内に計画立案できます。こうした変動の少ないモノの流れは、生産・輸送に必要とする施設規模を同期よりも小さくでき、川上の在庫も担保されるので、既存の同期にくらべると、急な大量注文やCOVID-19によるサプライチェーン寸断に対応しやすいです。またモノの流れの安定は経済の安定に直接つながるので、顧客の購買力の安定にもつながり、税収拡大に影響しコロナ後遺症等に対する福祉拡充の期待も高まります。このように、安定させたモノの流れは、COVID-19対策としてモノづくりを超えています。
【在庫期間情報による調整】
これまで平均量の調整にあたり、ROI(投下資本利益率)を提案してきました。これでは会計情報を照会しにくい場合やそもそも管理会計等のICTの仕組みづくりのない工場では実施できません。そこでROIの代替として簡単に導入できる情報資源を挙げると、前報で紹介した在庫期間情報があります。
前報では2期間以下で150%、そして6期間以上で150%を平均量に乗ずることを提案できました。さらにそれらを超えた長短の期間にも対応する調整をわりあてること、そして3~5期間にも独立して対応する調整をわりあてることを本報で提案します。
本報の提案に沿うと、たとえ安価な部品であっても、単純なモノサシ(在庫期間)で管理・発注することができます。一部のモノだけでお試しができますので、段階的に、またはアイテム別に導入をわりあてることができます。読者の生産システムやサプライチェーンでもいかがでしょうか?
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