SCMとキャッシュ
SCMの成果は単純にキャッシュに現れます。
既存の考えは余計なモノを入荷せずに、つまり経営資源を可能な限りキャッシュ(現金)で保ち続けることに集中し続けます。ブルウィップ効果(需要変動増幅現象)によって注文が拡幅して伝達され、その結果川上ほど過剰在庫になることが原因していました。
販売の対価は、証券、売掛金、そして現金などの形で生産システムに流れ回収と呼ばれます。生産システムから流れでるキャッシュを支払といいます。おもに人件費を含めた生産システムにかかる費用と、原材料・部品の代金です。
SCMではスピードが重視されます。意思決定や入荷から出荷までのモノの滞留期間など、ICTが活用されるほどスピードが求められ、そしてキャッシュにつながると信じられてきました。こうした考えや情報漏洩のリスク回避を目的に、キャッシュの現況・見込は調達の意思決定に参照されにくく、経営体によっては禁止されています。
視点の違い
モノとキャッシュを止まった状態(静的)でみると、過剰なモノに応じてキャッシュが少なくなっています。ですからサプライチェーン内で情報共有しモノの流れを販売に同期させて全体にモノを少なくし続けます。
モノとキャッシュを流れている状態(動的)でみると、キャッシュの最大化は単純に入ってくる「回収金額の最大化」と出ていく「支払金額の最小化」に過ぎません。そのうえで「決算時だけモノを少なく」すれば、常にモノを少なくするだけの従来の同期よりもさらに多いキャッシュをねらえそうです。
同期を超えて
回収の最大化と記すとつかみどころがありませんが、需要を満たすことを意味し、失注・欠品をゼロにすることです。支払の最小化は、借入をしないように調達することでムダな金利を払わないことを示します。
調達を販売との同期よりも前倒すと需要を満たしやすくなり、大量な調達で資金繰りが危ぶまれるなら山崩しすると借り入れずにすみます。さらに調達の前倒しと山崩しを数か月に押均してピーク値を低下させると原材料・部品は発注とおりに納品されやすくなるので、さらに需要を満たしやすくなります。
※ これらは筆者の提案する方針(モノ不足回避・キャッシュ不足回避)、そしてモノの流れ(安定)と同一です
お金で見る
調達・生産・販売のアイテム数は工場によって非常に多いことがあります。SCMは健全な資金繰りの実現を始点に資金を増大させる考え方です。納期遵守できるならモノは在庫期間等(既報)で把握し、むしろ回収、ストック、そして支払をキャッシュでマネジメントすることが推奨されます。
精査
提案法の1つの精査は、キャッシュに換算した表によってすべての月に利益をもたらすように調達を前倒す手法です。表の例でいうと、モノとキャッシュの見込から利益にならない月を探索(6月: △25)し、その月の支払につながる調達(4月: 60)にさかのぼって前倒し・山崩し・押均し行います。
経営体によって資金情報の照会は難しいかもしれません。資金管理部門から毎月、幅を持たせた調達可能な金額の上限を示してもらうことも考えられます。
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