経済性工学|キーワード辞典

経済性工学

経済的に有利な方策を探し、それらを比較して合理的な選択するための理論と技術の総合されたもの。

経済性工学とは

経済性工学とは、経済的に有利な方策を探し、それらを比較して合理的な選択をするための理論と技術の総合されたものに対する呼び名であり、経営意思決定をサポートする重要なツールの1つである。

企業の経営者、管理者、技術者、およびこれらを補佐するスタッフの人々が当面する問題の中には、長期の戦略的計画から、短期的な業務計画まで多種多様の意思決定問題が含まれている。こういった意思決定問題を解決するにあたり、企業ではできるだけ「経済的に有利な」案を選ぼうとする場合が多い。

また、行政機関、学校、協同組合、公立病院などの非営利組織体の計画問題でも、その組織を合理的に運営するために、できるだけ「経済的に有利な」案を探し、選択しようとする場面がしばしば生じる。こういった観点からの分析や計算を、一般に経済性分析とか経済計算と呼んでいる(実務では採算分析とか損得計算と呼ぶことも多い)。 

経済性工学は、そのような分析や計算の理論的な基礎を提供するとともに、これを実践に適用するために必要な技法や道具も用意するものである。

経済性工学の背景

経済性の評価や分析に関連する研究は、むかしからいろいろな学問分野で行われてきた。たとえば、管理会計、財務管理、企業経済学といったいわゆる社会科学の分野でも扱われてきたし、インダストリアル・エンジニアリング(IE)、品質管理(QC)、オペレーションズリサーチ(OR)などの経営工学の分野でも、それぞれ少しずつ違った角度からとりあげられてきた。

しかし、こういった諸科学は、それぞれの固有の関心領域(たとえば管理会計では経営管理に役立つ会計情報の提供、財務管理では資金の調達と運用のマネジメントというような)を持ちながら、その観点から経済性の問題をとりあげるのに対して、経済性工学は経済性の評価・分析そのものを主な研究領域とするものである。

また、IEの分野から派生したエンジニアリング・エコノミー(EE)は、経済性の問題に工学的なアプローチをするものとして、経済性工学の先駆的な研究分野であるとされている。しかし、EEは1950年代にE・グラント氏が比較的まとまった著書を発表して以来、主として設備投資の経済計算を中心とする「技術者のための経済計算」という比較的限定された領域として位置づけられてきた。

経済性工学は伝統的なEEが扱ってきた領域をほとんどカバーするが、それにとどまらず、以下に述べるように、経済的な意思決定をサポートするより広い領域を対象とし、それに役立つ理論体系と、実践に活かすための技法・道具を用意しようとするものである。

理論の対象

経済性工学は既存の経営諸科学や管理技術のどれかにとって代わろうとするものではなく、むしろ、それらと力をあわせることによって、大きな相乗効果をあげることができる。その基礎的理論が対象とするテーマの大要を紹介するとおよそ次のようである。

(1)経済性の比較の原則とコスト・利益のとらえ方‥割り勘計算と損得計算との基本的な違い、意思決定に役立つコストの考え方、優劣分岐分析と可変費用、貢献利益のとらえ方、手余り状態と手不足状態、埋没費用の考え方、非金銭的要因と経済性評価との関係、など

(2)投資案の評価と資金の時間的価値‥異なる時点の資金価値の比較、時間換算の諸公式、投資利益率の計算とその経済的意味、正味利益の現価、終価、年価、など

(3)条件に応じた判断指標の使い分け‥制約条件と効率指標との関係、方策の相互関係に見合った判断指標、独立案の順位づけと効率指標、排反案からの選択と差額の効率、限られた資源の有効配分、混合案からの選択、など

(4)複数投資案の比較と選択‥複数の排反的投資案の優劣比較、利益率法と追加利益率法の使いわけ、寿命の異なる投資案の比較、資本予算の有効配分、 回収期間法の位置づけなど

(5)不確実な予測のもとでの経済性評価‥意思決定と予測の役割、経済性の評価と感度分析の役立て方、代替案の比較と優劣分岐分析、決定分析の応用の仕方、など

適用分野

経済性工学は、経済的な優劣の評価・判定。選択を必要とする問題であれば何にでも使えるが、ここでは、企業経営の場で生じる代表的な適用分野を例示しよう。

(1)製品に関する選択問題‥製品選択におけるコスト・利益の考え方、歩のよい製品や商品の選び方、価格決定の経済性検討、長期的視野でのプロダクトミックス、複数制約のもとでの受注選択、など

(2)生産過程における経済性の問題‥生産設備の経済的な利用、製品と設備との有利な組み合わせ、生産過程の改善がもたらす経済的効果の評価、など

(3)内外製問題の経済性検討‥内外製問題におけるコスト・収益のとらえ方、長期的な視野での内外製計画、複数制約のもとでの内外製区分、など

(4)在庫問題とロットサイズの経済性‥在庫費用と在庫金利のとらえ方、ロットサイズの決定とコスト分析、過剰在庫を処分する問題、在庫調整の経済性、など

(5)品質と経済性の問題‥不良率の改善がもたらす利益の測り方、検査の経済性、品質アップのためのコストとユーザー側の効用との兼ね合い、ライフサイクル・コスト、など

(6)設備投資の応用問題‥物価変動を考慮した設備投資計画、経済寿命と取り替え計画、複合的な投資プロジェクトの評価、技術進歩を考慮した取り替え問題、なだ

(7)人員計画と経済性‥設備の自動化による人員削減計画、許容投資の考え方、従業員の雇用計画、残業や期間工・パートタイマーの利用に関する経済性検討、など

(8)財務計画と予算配分‥投融資計画の経済性、資金調達と資本コストの分析、リースか買取りかの経済性比較、全社的な視野での設備予算の有効配分、など

(9)税引後利益のとらえ方‥経済性の評価と所得に比例する税金、実効税率の求め方、設備投資計画と税引後利益の計算、減価償却政策の経済性と税金との関係、など

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