デルファイ法|キーワード辞典

デルファイ法

専門家の直観を、繰り返しのアンケートによリシステマティックに集め、それを収れんさせる予測手法のこと。

デルファイ法とは

デルファイ法は、1964年アメリカのランド社のヘルマー氏が考案したものである。それは従来の会議方式の欠点を克服するためと直観的予測手法の開発のために、専門家や天才的発明家達の直観を繰り返しのアンケート方法によって、システマティックに集め、それを収れんさせた結果を予測に使おうとしたのが発端である。

デルファイ法の名前は、中部ギリシャの古代都市で、アポロンの神殿のあるデルフォイ神域として名高いその地名にちなんで命名された。ここは、古代よリギリシャの中心地として位置づけられ、多くの人々が神官を通じてご神託を聞きに集まった。この神官は高い見識の持主で、古代ギリシャ国家の政治にも強大な影響力をもっていた。このような歴史的背景からもわかる通り、デルファイ法の本質は、すぐれた専門家だけが独得の勘を活かすことにあるわけである。

一般にすぐれた専門家は、展望を持ち、明晰な思考をすると同時に、当世風の考え方や一時の流行に左右されにくいという特性を持っている。また、専門家の勘は、単なる論理的思考の積み重ねだけによるものでないところに特徴がある。

デルファイ法活用の目的と手順

デルファイ法活用の目的は、非常に広範かつ多岐にわたっている。その活用目的は、次の通りである。

(1) 長期の企業計画の代替的目標設定
(2) 研究開発プロジェクトの評価。選択
(3) 政策プログラムの評価と資源配分
(4) 教育、医療、流通などの公共部門の企画
(5) 技術進歩と社会変化との連関性の分析

つぎに、デルファイ法実施の基本手順を示すと次のように要約される。

(1) 予測目標の設定
(2) 予測課題の発掘・評価(シナリオ作成)
(3) 予測項目の選定
(4) 質問票の設計・制作
(5) デルファイ・メンパーの選定
(6) 繰り返し質問の実施と中間結果の集計。分析と質問票の追加修正
(7) 回答結果の統計的処理、分析
(8) 少数意見、特異意見の調査、分析、評価

回答結果のフィード・パックの回数は、通常、二回行う場合が最も多い。質問は、予測課題の重要度、実現の可能性、実現の時期などについて主として聞く。さらに、実現のための付帯条件や回答者のその予測課題に関する専門度もあわせて聞き、回答結果の集計分析に役立てる。

実現時期の予測値分布は、普通、図のように示す。これは全回答数を四等分し、中間値をはさんだ上下四分位値の部分のみを示したものである。

デルファイ法の長所と短所

デルファイ法の有効な活用をはかるため、その長所・短所を十分理解しておく必要がある。まず、長所としては、つぎのことがあげられる。

  • 委員会などの会議形式の集団討議ではないので、特定の人の意見に流されることがなく回答者各自の直観を自由に発表できる。
  • 集計された結果のフィード・バックを行い、その中間集計結果を新たな情報として回答者に提供する。そして、回答者がはじめに重要だと判断した要因の見直しや修正ができ、回答に対する自信を深められる。
  • 回答結果の相関分析やクラスター分析などいろいろの統計的処理が可能である。
  • 一方、短所は、つぎのようなものである。

  • 適当な意見の一致をみるために、特異な回答をした人はその理由を明示することを強要され、心理的負担を感じることがある。
  • 権威ある専門家の回答が、一般の人の回答に屈することがある。つまり、衆知が英知を押しつぶしてしまう危険がある。
  • 質問のしかた、回答者の選び方に十分な配慮なされていないと、時間と経費の浪費につながり、関係者の参画意欲を低下させる。
  • デルファイ法を活用する場合は、これらのことを十分熟知した上で、手法の活用を図らないと思わぬ失敗を招く。

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