環境とSCM|森林大国の国産材振興

はじめに

コロナウイルスにより経済のダメージをまだなお受け続けています。コロナウイルスが天然か人工かの議論はあるものの、この世にない生命等をゼロから生み出せる能力は、まだ人類が持ち得ていないと考えることが自然でしょう。つまり、現在のコロナウイルスが人工であっても元になる加工しやすい天然のウイルスが在ったわけで、そうしたウイルスの変異を含め、今後も脅威に、そしてあたらしくみえるウイルスが人類の前に出現しかねません。
こういったウイルスの人類社会への流入経路は、なんらかの実験動物からの感染、捕獲した野生生物が保菌していたことによる感染、そして保菌した野生生物が人間社会に接近したことによる感染の、いずれかでしょう。

3つの感染のうち前者2つは人類がみずから注意深く行動するか行動そのものを止めればよいだけで、いわば自己制御の可能な領域です。ここで問題は最後の生物側からの接近で、そうした状況自体を消し込み避けるしか手立てはありません。そして一番効果があると考えられることが、遺伝子バンクとみなすことのできる天然林の伐採をやめることです。木材生産を人工林でまかない、計画的に伐採・植林・保育することで、天然林伐採の奥地化による木材の高額化を避けることもできるでしょう。こうした森林との向き合い方を全世界で実施することで、脅威となるウイルスを保菌した野生生物に接近しにくくなります。

森林

日本は国土の7割が森で構成され、先進国ではフィンランドに次ぐ森林大国です。国内の天然林から未知のウイルスが出現することは考えにくいのですが日本は森林大国であるに関わらず自給率が3割程度と大変低いため、海外の天然林伐採を食い止めて未知のウイルス出現を避けるためにも、国産材の振興は喫緊の最重要課題といえるでしょう。

木材

木材の主要な使用用途は住宅です。仮に1棟あたり25m3の製材品を使用するとしましょう。歩留まりを65%とすると、ほぼ40 m3の素材(丸太)が必要になります。そして伐採前の立木から素材にする歩留まりを60%とすると67m3必要になります。例えば90万棟が1年で着工されたとすると6,030万 m3分の森林が伐採されたことになります。適正に管理された国産材でしたら問題ありませんが、自給率からするとこのうち4,010万 m3相当は、海外の森林伐採につながっており、すべてが合法的な伐採かいいきれるわけではありません。これらも国産材でまかなえれば未知のウイルスの人類への流入リスクを抑えることができます。

木材は生物資源なので大量に水分を含みます。ですから昨日伐った木が構造材などで建築に今日使われることはありません。人工乾燥機なら1週間程度、天然乾燥なら状況や経営体の工夫によりますが1~3月前後の期間によって含水率を低くさせ、建築後の歪み等を避けるようにします。このように必要な時期と伐採時期がずれることから、サプライチェーンとしてみた生産計画立案はコンピュータ等他の工業製品と変わらずに高度なSCMの視点を要し、さらに未知の病原体を人間社会に持ち込まない技術、つまりウイルスへの対抗策になります。

森林とSCM

日本国の森林は木材販売によるキャッシュでまかなわれている部分があります。需要動向に依存するだけの既存のサプライチェーンだけでは森林整備全般に必要なキャッシュが、適正なタイミングまでに還元されるといいきれません。既報(JIT3: キュービック ジット )において、森の手入れにキャッシュを間に合わせる提案をしました。このようにサプライチェーンのモノとキャッシュの源泉といえる個所があるときは、どちらの流れも途絶えさせず連続させ、キャッシュ不足が感知・予測された場合に俊敏に反応できる体制を持続することで、源泉の質・量を損なわずにむしろ育成できるといえるでしょう。

原材料供給から最終消費にいたる、すべての業種・現場の必要とするキャッシュをすべてまかなえることを第一の方針に据えてこそ、真のSCMの幕開けなのではないでしょうか?

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青柳 修平
キャッシュの最大化を、モノの多少にとらわれることなく考えると、単純に、販売を最大化させ、支払を最小化させればよい。このためには、失注・欠品しないほどモノを在庫し、返済金利の生じないように借入しなければよい。

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